新日本監査法人が全顧客に対して不正チェックのビッグデータを活用すると発表。

 

まずは5月31日日経新聞の記事の抜粋を見てみましょう。

新日本監査法人は約3000社の全顧客企業を対象にビッグデータを使い、会計処理の不正をチェックする仕組みを導入する。

あと以下も大事。

提携する大手会計事務所、アーンスト・アンド・ヤングのシステムを活用する。顧客企業の全帳簿データを解析し、通常より大幅に高い単価での取引など不正につながる取引を自動で検出する。

 

さて、アーンスト&ヤングですが、ビッグ4の一つで、こちらは新日本監査法人の提携先です。ちなみに、私はアーンスト&ヤングに所属していました。

 

さて、せっかくですから、現在の新日本監査法人の状況をまず整理してみましょう。新日本監査法人は、東芝問題から始まり、東芝の監査打ち切り、そして、大手である富士フィルムも監査契約が打ち切られてけっこうきつい状況であるというのは前に述べました。それがこちらの記事です。

ショッキングニュース 富士フィルム、監査法人を新日本からあずさへすることに。。。

 

結果として、東芝はPwCあらたに、富士フィルムはあずさへと監査法人を変更しました。これは痛かったと思います。

 

しかし。。。実はこれ以外にも、この新日本監査法人から他の監査法人へと鞍替えする動きがあります。例えば、王子ホールディングス、ツムラ、カルビーなど、規模の大きな企業も、新日本監査法人との監査契約打ち切りが決まってます。

 

各種報道によると、今年3月末時点で新日本監査法人は965社の上場企業の監査を担当していますが、最初に引用した31日の日経新聞の報道によると、

約40の上場企業が監査契約を打ち切ると公表し、信頼回復が急務となっている。

 

というわけで、なんと既に約40社もの上場企業が監査契約を打ち切るとされています。めちゃめちゃつらいですよ、約40社っていうのは。そもそも、東芝、富士みたいなでかいところが抜けただけでもものすごく痛いんですから。

 

ところで、最近はこういった話で水面下含め、かなりどたばたしているということを耳にしました。タイミングとして、なぜこういったタイミングというと、日本の上場企業は3月決算の会社が多く、株主総会は6月。だから、6月の株主総会に合わせ、監査法人を変えようか迷っている会社さんは、新日本監査法人との契約をどうするか、と動いているからです。想像してみてください。他の監査法人に変えるというドラマを。けっこうなドラマがあると思いますよ、監査法人を変えるというのは。それでもって、現在、遂に約40社打ち切りが決まっている。

 

さて、ビッグデータの話に戻りましょう。ビッグデータの活用、いいと思います。ビッグデータっていうのは、大容量のデータのことですが、ビッグデータを活用するというと、要は、例えば電子化が進んだ今日、データっていうのは大量にあるわけで、こういったデータを使って統計的に分析しようというものがこのビッグデータの活用ということになります。

 

例えば、アマゾンを使っても、この作品がおススメみたいな形ででてくるでしょう。しかも、自分がまさしくこういうのを探していた!と思えるようなものも中にはあります。これは、ビッグデータを活用して、我々が何をほしいのかを分析してだしているからです。そしてこのビッグデータ、もちろん不正分析で大いに活用できます。

 

というのも、不正っていうのはやはり兆候があるわけで、何か怪しげな動きがあればやはり怪しいわけです。これをビッグデータを使って機械的に少しでもやっていけば、今よりも少なくとも、不正を見抜ける可能性も増えるはずなわけです。不正がなくなることは絶対ないけれども。

 

さて、このビッグデータを全クライエントに活用する、という提案。メリットもありますが、顧客にとってはいろいろ不明確な点が多いでしょう。やはり”監査される側”として気になるのは、

  • これで本当に不正リスクが減るのか
  • 具体的にビッグデータは不正をどう暴いてきたか
  • コストの面はどうなるのか
  • これから監査手法が変わってしまうのか

 

このあたりをしっかり説明してほしい、というのが本音でしょう。今回は全クライエントが対象なわけですから、ビッグデータを活用することが決まったとはいえ、全クライエントにこのあたりの説明を明確にしっかりすること。そして、顧客と同じ目線で、真摯に向き合うこと。これが大事だと思います。

 

顧客からの信頼回復が急務です。新日本監査法人はふんばりどころ。反省点はしっかり反省し、顧客との信頼関係、しっかり回復してきただきたく思います。

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