日立の登場でますますおもしろくなってきた。
先日、武田薬品が和光純薬工業の売却を検討と、富士フィルムが買収提案をしたという驚きの2つの話をまとめて書きました。
[最大1000億円の買収] 富士フイルム、武田薬品子会社の和光純薬工業、買収提案。武田はなんと、もともと分社化した会社の和光純薬工業の売却で、勝負に出る。いろいろサプライズ
この記事はかなり多くの経済人に読んでいただきました。今回はこの話の続きになります。まだ上記記事を読まれていない方は、バックグラウンドの情報として、どうぞご確認ください。
日立製作所、武田子会社の和光純薬工業に買収提案
日経新聞によると、日立製作所が武田薬品工業に対し、武田子会社の買収を提案したことが分かったとのこと。武田の子会社とは、創薬用試薬の国内最大手の和光純薬工業とのこと。
日立製作所が武田薬品工業に対し、同社子会社の買収を提案したことが分かった
対象は創薬用試薬の国内最大手の和光純薬工業
日立も参戦ですか。これはおもしろすぎる展開でしょう。とりあえずなんで日立が参戦するのか、見ていきましょう。
日立製作所の和光純薬工業買収は、日立化成が主体となる形。
上記日経新聞によると、関係者が話したところ、日立は子会社の日立化成が主体となる形で応札したとのこと。日立本体も買収資金の一部を負担する可能性があるとのこと。
関係者によると、日立は子会社の日立化成が主体となる形で応札
日立本体も買収資金の一部を負担する可能性がある
というわけで、日立は日立化成を前面に出し、買収へいく、と。でも、日立本体も買収資金の一部を負担する可能性があるってことで、日立はグループとして和光純薬工業の買収にマジで参戦してきました。
あぁ、なんとなく想像できますね、なんで一部負担なのか。それが下記。
日立化成はちょうど1000億規模の成長分野となる大型案件を探していた。足りない部分は日立製作所が負担するのではないだろうか。
ここでは私の私見がかなり入っています。
今回の案件は、だいたい買収額は1000億円超になるといわれています。上記で書いた私の前回の記事では、武田は10億ドル(約1061億円)余りを調達する、と書きました。
で、です。日立化成ってのは、中期経営計画を今年出してます。
気になる方のために、日立化成からのオフィシャルのPDF文書を下記で貼っておきましょう(すでにリンク切れ)
2018中期経営計画 (2016-2018年度)
ここには、1000億円規模の大型M&Aも視野に入れ、非連続成長を実現と書かれてあります。
1000億円規模の大型M&Aも視野に入れ、非連続成長を実現
今回の買収額もだいたいこんなもんの大型案件でしょう。まさにどんぴしゃ。
でも、おそらく、買収争奪戦で和光純薬は1000億円じゃ買えないって話になってくるんですよ。ちょっと(もしやだいぶ)オーバーする、と。で、このオーバー分は日立製作所が出してもいい、そんなあたりかもしれませんね。
実際の配分は今後決まるとしても、ここで重要なのは、日立グループとしてはここで、おれたちはほしいから、本体の日立を登場させてもいいと思ってる、っていうメッセージを発してることですよ。この意味合いというのは、けっこう大きい。
グループとして、拡大するのに君たちが必要なんだ、と。
私も企業買収やってましたからね。こういうドラマも十分ありえると思いますよ。ただ、私の推測が混じってるんで、そこはご了承ください。
なぜ日立製作所(日立化成)、または日立グループは和光純薬工業に買収提案をしたのか
で、なんで日立グループは和光純薬が欲しいのか、という話になってくるわけです。
上記日経新聞によると、成長分野のヘルスケア事業強化に向け、製薬会社や医療機関とパイプを太くする、とのこと。日立のヘルスケア事業売上高は3326億円で、2018年度に2015年度比3割増の4400億円に伸ばす計画とのこと。
3月には日立化成が再生医療用細胞の受託製造に参入しているとのこと。和光純薬の技術や顧客網を取り込んで、収益基盤の拡充を狙うとのこと。
成長分野のヘルスケア事業強化に向け、製薬会社や医療機関とパイプを太くする
日立のヘルスケア事業売上高は3326億円
2018年度に15年度比3割増の4400億円に伸ばす計画
3月には日立化成が再生医療用細胞の受託製造に参入
光純薬の技術や顧客網を取り込んで、収益基盤の拡充を狙う
まぁ要は、日立グループは売上を伸ばす計画の中で、成長分野であるヘルスケア事業を強化する必要性を感じており、試薬のトップランナーである和光純薬との相乗効果がここで十分ある、と考えているということでしょう。
富士フィルムは日立の和光純薬工業買収参戦に、どう動く。東芝メディカルシステムズの二の舞にはなる可能性は。
さて、もう一人注目されなければならないプレーヤー。それが富士フィルムです。そもそも、富士フィルムが日立より先に手を挙げてるんですよ。おれらが欲しい、と。
富士フィルムは、前回も書きましたが、創薬部門を成長させ、医療事業を強化させたい。そして、東芝メディカルシステムズでキャノンに競い負けたので、次のターゲットが和光純薬です。
さらに、東芝メディカルシステムズの時は、キャノンの買収金額が6655億円でした。ということで、ここで競っていた富士フィルムだけあり、買収資金力という意味では、大変強力なわけです。
というわけで、資金力でいえば、決して日立グループに劣っていないわけです。富士フィルムは東芝メディカルシステムズではキャノンに負けてますから、今回の和光純薬工業の買収では、ガチで勝負にきますよ。
そのほかには、投資会社とかも参戦しています。こっちに関しては、また可能性がでてきた際か、別の機会があれば書きたいと思います。
武田にとっては和光純薬工業の売却資金の使い道が重要
前回の記事でも書きましたが、和光純薬工業と武田ってのは、長年の歴史のあるパートナーです。その会社を今回売ることにした武田。この決断には驚きと同時に、いったいどのようにこの売却資金を使うのだろうかと、私は高い関心をもってみています。
日立グループも参戦で、高値になる可能性も十分でてきました。武田にとっては、買収後の資金の使い方。ここが大変重要。
まだ武田は売っていませんが、ぜひこちらにも高い関心を寄せながら、この買収合戦を見守っていただきたく思います。それでは!
[更新] この記事の話の続きが読みたい方はこちら。