ソニーの頭痛は本当に治ったのかどうか。
話の前提: ソニーの中国広東省広州市の工場で従業員による大規模なストライキ。ソニーが4000人を抱える工場が2週間停止。
ソニーの中国工場での大規模ストライキ。報道当初の様子、ソニーが補償金を支払う必要がないのに従業員がそれを要求していたこと、そして、広東省で近年ストライキが多いなどについては、下記の記事でまとめました。
[ソニー中国工場で大規模なストライキ] ソニー中国工場従業員はソニーに補償金要求。ソニーの中国工場売却決定後のやっかいな広東省の労働争議
今回の記事は、前回の記事の続編となります。注目されていたソニーの対応やいかに。
中国広東省広州市にあるソニーの工場でのストライキが25日に収束し、約2週間ぶりに生産が再開される見通し。全生産ラインが約2週間停止したため、設備保守に時間がかかり、本格復旧は早くても12月初旬の見通しか。
問題収束にソニーが動いたようです。
日経新聞によると、中国広東省広州市にあるソニーの工場(ソニーの完全子会社で中国現地法人「ソニー電子華南」の広州工場)で、今月10日に起きた大規模なストライキが25日午後に収束し、約2週間ぶりに生産が再開される見通しとなったとのこと。
全生産ラインが約2週間も停止したため、設備保守に時間がかかるとのこと。本格復旧は「最低でも1週間はかかり、早くても12月初旬」(工場社員)の見通しとのこと。
- 中国広東省広州市にあるソニーの工場で、今月10日に起きた大規模なストライキが25日午後に収束し、約2週間ぶりに生産が再開される見通しとなった
- ストによる混乱が続いたのは、ソニーの完全子会社で中国現地法人「ソニー電子華南」の広州工場
- 全生産ラインが約2週間も停止したため、設備保守に時間がかかるとのこと。本格復旧は「最低でも1週間はかかり、早くても12月初旬」(工場社員)の見通し
2週間にも渡るソニー中国広東省工場でのストライキ。週内に仕事復帰しない従業員は強制解雇もあったということでしたから、私も注目していました。
結果、ストライキは収束、生産が再開される見通しとなりました。ソニーはいったいどう対応したのか、それが下記。
どのようにソニーは中国広東省広州市の工場のストライキを収束させたのか。ソニーは職場への復帰を条件に、1人当たり最大1千元(約1万6千円)を支払う案を提示か。
上記日経新聞によると、ソニー側が職場への復帰を条件に、1人当たり最大1千元(約1万6千円)を支払う案を提示。25日までに、ほぼ大半の従業員が職場復帰への承諾書にサインしたとのこと。
ソニー側が職場への復帰を条件に、1人当たり最大1千元(約1万6千円)を支払う案を提示
25日までに、ほぼ大半の従業員が職場復帰への承諾書にサインした
ソニーの解決策。それは、金銭を提示して大半の従業員にストを辞めさせ、職場へ戻ってきてもらうというもの。
悩ましい。あまりにも悩ましい。なぜ悩ましいのか。
本来、ソニーに非はなく、補償金を支払う必要もない。よってストライキされても、強気で望めたはず。それなのに、お金を払って、従業員に戻ってきてもらうわけです。
なぜソニーは中国工場ストライキを金銭で早期解決したいのか。なぜソニーは金銭を支払ってまで中国広東省工場の従業員に戻ってきてもらうのか。
さて、今回、ソニーはお金を払って従業員にストをやめてもらい、職場に戻ってきてもらうわけです。なぜこのような悩ましい決断をしたのか。
これまでの経緯も踏まえ、なぜソニーがこのような行動をとったのか、3つの重要なポイントをまとめたいと思います。
- 従業員に騒ぎ続けられるよりも、補償金で早期解決を模索してきた多くの日系企業と同じ方向性の動きをとった
- ソニーは商戦期前に、ストライキ問題を片付け、アップル向けのカメラ部品を早期復旧したい考え
- ソニー広東州工場売却先である中国深圳欧菲光科技と売却時期などで最終合意に至っていない
ポイント1.従業員に騒ぎ続けられるよりも、補償金で早期解決を模索してきた多くの日系企業と同じ方向性の動きをとった
これは前回の記事でも書きましたが、これまで多くの日系企業は支払う必要のない補償金を支払って問題を解決してきました。従業員に騒ぎ続けられるより、早期解決したほうがトクだとの考えからです。
これには賛否両論あるでしょう。今回、ソニーは結果としては金銭を支払って早期解決に動いたわけです。
ただ、です。下記のポイント2と3があったからこそ、こういった動きに傾いていった可能性があります。
2.ソニーは商戦期前に、ストライキ問題を片付け、アップル向けのカメラ部品を早期復旧したい考え
上記日経新聞によると、同工場はスマートフォンに搭載する重要なカメラ部品を生産し、米アップルに大量供給しているとのこと。商戦期を迎え、早期復旧を急ぎたい考えとのこと。
同工場はスマートフォンに搭載する重要なカメラ部品を生産し、米アップルに大量供給している
商戦期を迎え、早期復旧を急ぎたい考え
確かに、商戦期です。4000人抱える工場ですから、供給量も半端ないでしょう。このままストップが続くと、商戦期を逃してしまいます。
でも、この工場はどうせ売るのだから、代わりにさっさと売ってしまってはどうかと考える方も多いでしょう。そこが今回のミソでもあります。それが下記。
ポイント3.ソニー広東省工場売却先である中国深圳欧菲光科技と売却時期などで最終合意に至っていない
今回ソニーにとって痛すぎるのは、次の工場の買い手と、売却時期などで最終合意に至っていないことです。先日の日経新聞によると、中国深圳欧菲光科技と売却時期などで最終合意に至っておらず、売却交渉に影響をきたす可能性もあるとのこと。
中国深圳欧菲光科技と売却時期などで最終合意に至っておらず、売却交渉に影響をきたす可能性もある
結局、ここがネックかもしれません。いつまでに売却、従業員はこの日に全員引き取ってもらう、という契約だったなら、今回の問題はまったく別問題になっていた可能性があります。
さて、問題収束に動いたソニーですが、今回ソニーが事態収束のために支払う金銭について、下記でまとめましょう。
ソニーが中国広東州工場社員に支払う最大1千元は、従業員の1カ月分の給与(基本給)の半分程度に相当。ストが続いた約2週間の無断欠勤も勤務扱いで給料も満額支払う。
上記日経新聞によると、同社が支払う最大1千元は、従業員の1カ月分の給与(基本給)の半分程度に相当するとのこと。
さらにソニー側はストが続いた約2週間の無断欠勤も勤務扱いとし、給料を満額支払うことを提案し、大半の従業員が了承したとのこと。
同社が支払う最大1千元は、従業員の1カ月分の給与(基本給)の半分程度に相当する
さらにソニー側はストが続いた約2週間の無断欠勤も勤務扱いとし、給料を満額支払うことを提案し、大半の従業員が了承した
ストライキの期間も無断欠勤です。けっこうな待遇だと思いませんか。ソニーは、戻ってきてください、と言っているのです。
これに対し、ソニー中国工場の従業員はどう思っているのでしょうか。
上記日経新聞によると、同工場の男性従業員(26)は日本経済新聞の取材に応じ、「何とかお金が欲しかった。半月分の給料に当たる金がもらえるなら、まあ満足だ」と、職場復帰の理由を語ったとのこと。
同工場の男性従業員(26)は日本経済新聞の取材に応じ、「何とかお金が欲しかった。半月分の給料に当たる金がもらえるなら、まあ満足だ」と、職場復帰の理由を語った
さて、ソニーの対応。悩みに悩んでの対応かとは思います。しかし、今後の売却交渉の内容によっては、今後もソニーは悩みを抱える可能性がなきにしもあらず。
ソニーにとっては、売却交渉を予定通りきっちりと進めること。これが今後、重要なポイントになってきます。今後も要注目です。