買収の具体的時期なども決まる。武田のキーマンの影もちらつく。

 

富士フィルムの和光純薬買収。この買収劇は大変興味深いものでした。以前、私の方でも大量に記事を書きましたが、その中でも一番まとまっているものが下記の記事です。一連の流れが分かるかと思います。記事の紹介してくださった方々ありがとうございました。

 

[和光純薬買収争奪戦の結果がおもしろすぎる] 富士フイルムが武田子会社である和光純薬工業買収へ。買収額は驚きの2000億円規模。富士は和光をどうしても買いたかった。武田は和光を上手に売った

 

今回は、正式発表に合わせ、上記の記事に多少情報を付け足して新たな発見を提示する形で話をしたいと思います。いちよう、これまでの話の流れが分かっている方向けに書きます。

 

 

富士フイルムホールディングスが武田薬品工業子会社で試薬などを手掛ける和光純薬工業をTOBで1547億円で買収すると正式に発表。

日経新聞によると、富士フィルムホールディングスは15日、武田薬品工業傘下で試薬などを手がける和光純薬工業を約1547億円で公開買い付けで買収すると発表したとのこと。

 

2017年2月に買い付けをはじめ、4月に子会社化し、2018年3月期から連結対象とするとのこと。

 

  • 富士フィルムホールディングスは15日、武田薬品工業傘下で試薬などを手がける和光純薬工業を約1547億円で公開買い付けで買収すると発表した

  • 2017年2月に買い付けをはじめ、4月に子会社化し、2018年3月期から連結対象

 

金額が正式発表で前回とは変わってきていますが、ほかにもいろいろ費用がかかってくるでしょう。いずれにせよ、決して割安とはいえない金額です。そして、今回興味深いことに、古森会長がある人物の名前を出しました。

 

 

武田の和光純薬売却でのキーマンは谷川閑史・現会長の可能性も

上記日経新聞によると、富士フィルムの和光純薬買収に至るまでの経緯として、再生医療などヘルスケア分野の成長を模索するなか、4~5年前に武田薬品工業の長谷川閑史・現会長との話のなかで持ちかけたとのこと。その頃からずっと欲しいと考えていたとのこと。

 

  • 富士フィルムの和光純薬買収に至るまでの経緯として、再生医療などヘルスケア分野の成長を模索するなか、4~5年前に武田薬品工業の長谷川閑史・現会長との話のなかで持ちかけた

  • その頃からずっと欲しいと考えていた

 

ほらほら。ウェバー社長以外で、やっぱりいた。前回の記事で、私はこう書きました。

 

ウェバー社長以外で、これを主導していたキーマン、もしくは、影響力のある人物がいたはず。その人物は、けっこうな戦略家でしょう。

 

で、今回、長谷川会長の名前が古森会長から出たわけです。もちろん、武田は戦略上の理由で和光を売りにだしているわけですが、長谷川会長が既に4-5年前から話を持ち掛けられていたわけです。

 

結局、長谷川会長が、今回はウェバー氏以外で影響力のある人物だった可能性はあるでしょう。会長職ということを考えても、妥当な人物かもしれないですね。

 

さて、今回の買収金額についての古森会長のコメントを見てみましょう。

 

 

スポンサーリンク

古森会長は富士フィルムの買収金額の妥当性をどう考えているか。

上記日経新聞によると、古森会長曰く、「(複数の企業が競り合う)入札方式だったため、ある程度買収金額がつりあがった面は否めない。ただ、そろばんをはじいて企業価値を見極めて応札しており、妥当な範囲におさまる金額だと考えている」とのこと。

 

  • 古森会長「(複数の企業が競り合う)入札方式だったため、ある程度買収金額がつりあがった面は否めない。ただ、そろばんをはじいて企業価値を見極めて応札しており、妥当な範囲におさまる金額だと考えている」

 

 

富士フィルムは和光純薬が欲しかったから買収金額がつりあがっても買った。日立の上限を超える金額で和光を買った。古森会長というカリスマなしでは成しえなかった話であろう。

私の主張は前回の時から変わっていません。今回は、富士フィルムがどこよりも高い金額で、和光を買いにいったんです。肉食系の攻めです。

 

前にも書いたように、日立は、けっこうおもしろい攻め方で本格的に買いに乗り出していたんですが、その上限を行ったのが富士。富士フィルムがなぜそこまでしてほしかったのかは、前回の記事参照。

 

古森会長の発言は、あくまで公式の発言。ちょっと高いけど欲しかった、のような中途半端なことをいう人はいません。

 

今回の場合、おそらくは、トップがその値段で買いたかったのかどうだったのか、ここだと思っています。

 

だから、前回も書いたように、今回はっきりと分かるのは、古森会長が富士フィルムでいまだに権力のあるカリスマであるということ。

 

古森会長は、時代の流れを読む天才。古森会長なしでは、今の富士フィルムの地位はなかったわけです。だから、古森会長の考えは傾聴に値する。

 

ただ、古森会長に対して、ちょっと待てよと言える人材(いわゆるポスト古森)が富士フィルムのトップ陣営で育っているのかどうか。古森会長は元気で強いリーダーですから、ショートタームはこれでいいのかもしれませんが、ロングタームになってくると、ここはキーになってきます。

 

 

富士フィルムは和光純薬を手に入れることで、再生医療事業で足りなかったピースがそろうと考える

上記日経新聞によると、古森会長曰く、和光が持つ細胞を培養する培地や、増殖スピードの制御などに使うサイトカインの技術を取り込むことで、富士フィルムの再生医療事業で足りなかったピースがそろうとのこと。

 

ほかにも病気の診断装置、医薬品の受託製造、化学材料などで技術上の補完関係があるとのこと。さらに富士フィルムは大病院、和光は小児病院に強いなど販路拡大でも効果があるとのこと。

 

  • 和光が持つ細胞を培養する培地や、増殖スピードの制御などに使うサイトカインの技術を取り込むことで、当社の再生医療事業で足りなかったピースがそろう

  • ほかにも病気の診断装置、医薬品の受託製造、化学材料などで技術上の補完関係がある

  • さらに当社は大病院、和光は小児病院に強いなど販路拡大でも効果がある

 

古森会長の作戦通り、富士フィルムは医療事業を確実に強化させてきています。

 

今後、和光の技術を生かし、この分野でのリーダーになれるかどうか。要注目です。

スポンサーリンク