やはり中途半端な20%未満ではだめだったか。
東芝綱川社長「半導体、株式の過半保有にこだわらず」
日経新聞によると、東芝の細川智社長が14日午後6時半から記者会見したとのこと。
細川社長は会見で、売却予定の半導体メモリー事業について「株式のマジョリティー(多数派)確保にはこだわらない」と述べ、過半数の株式を譲渡する可能性に含みを持たせたとのこと。
14日午後6時半から記者会見した綱川智社長
売却予定の半導体メモリー事業について「株式のマジョリティー(多数派)確保にはこだわらない」と述べ、過半数の株式を譲渡する可能性に含みを持たせた
揺れに揺れ動いている東芝問題。14日の東芝の会見では、決算発表を3月14日に延期などいろいろサプライズがあったわけですが、今回はサプライズの一つであった半導体の過半数売却の可能性という一点に絞って話をします。
豆知識: もともと東芝はメモリー半導体事業の分社で、出資比率を19.9%(20%未満)に抑えたかった。しかし、現実の交渉の場では、ファンドが20%の上限がなければ、かなり高い値段で買ってもいいですというオファーをした可能性がある。半導体事業を分社化してきっちりお金を得ないと話にならない状況だから、東芝はそういったオファーを取り、「短期的にまずは生き残る」策を取るか。なぜ東芝は半導体メモリー事業のマジョリティーにこだわらないのか。
米原子力事業での大失態、東芝。
結果として、半導体事業を売ることに。半導体事業は東芝の最後の武器であり、東芝の中で本当にもっとも魅力的な事業であります。
東芝の半導体事業分社での出資交渉については、以前2つの記事を書きました。
まず最初の記事。ウエスタンデジタルという、同業社としてはもっとも出資する可能性が高い会社について。
その次がこちら。こちらでは東芝が半導体分社では、20%未満の出資を希望しているともしていました。
あと、上記記事でもあるように、ファンドも参戦しています。
20%未満なのは、半導体は東芝最後の武器であり、どうしても東芝に技術を残しておきたいから。他社からの影響力を極力排除したいという意味でもあります。
ただ、その時にも書いたように、20%はファンドにとっては中途半端な数字。しばらくお金を預けておいてねに等しいわけです。
もちろん、20%未満でも、魅力のある東芝の半導体事業にお金を入れたいですというところはいたでしょう。東芝の半導体事業はそれだけ魅力的な事業です。
しかし、おそらく現実的な交渉の場では、出資比率の20%という上限がなければ、これだけだしても欲しいです、というようなオファーがあったと考えていいと思います。
どうしてもお金が必要な東芝。
半導体分社で、なるべく高値で出資してもらう「必要」が絶対的にあるわけです。
東芝は、20%という上限を取り払うことで、半導体出資への魅力を上げ、出資希望者に競争させ、なるべく高値できっちり売ることが、東芝が「短期的に」生き残るのに必要と判断したのでしょう。
上記日経新聞によると、東芝は会見で、半導体メモリー事業の「マジョリティーにこだわらない」とした発言の意図として、
「半導体メモリーについては提案をいろいろいただいているところだ。一番価値が出る、一番いい選択肢を柔軟に考える」
との答えがあったとのこと。
「マジョリティーにこだわらない」とした発言の意図
「半導体メモリーについては提案をいろいろいただいているところだ。一番価値が出る、一番いい選択肢を柔軟に考える」
一番価値が出る。「短期的に」一番価値が出るのは、間違いなく、半導体事業に過半数を出資してもらうことです。
さて、問題は「長期的」視点にたったとき、東芝はどうなってしまうのかという点について。
半導体なき後の東芝、東芝は何の会社として成長戦略を描いているのか。東芝は日立の後追い企業では勝ち残れない。長期的戦略では日立との違いを明確にしないといけない。
上記日経新聞によると、今後、東芝は何の会社として成長戦略を描いていきますかという質問に対し、東芝は会見で、
「社会インフラ、半導体メモリー以外の電子デバイス、エネルギーだ。海外の原子力事業は土木建築を含むところは受注しないが、その他の分野はやっていく。(あらゆるモノがネットにつながる)IoTもしっかり進めていく」
としたとのこと。
今後、東芝は何の会社として成長戦略を描いていきますか
「社会インフラ、半導体メモリー以外の電子デバイス、エネルギーだ。海外の原子力事業は土木建築を含むところは受注しないが、その他の分野はやっていく。(あらゆるモノがネットにつながる)IoTもしっかり進めていく」
微妙すぎる答え。
日立が先行していってしまうような話が多い。これでは、東芝が日立の後追い企業になり、復活どころの話ではなくなります。
東芝の半導体という魅力がなくなるわけです。半導体の代わりの魅力を生み出し、日立という企業との違いを明確にすること。東芝が長期で飛躍するには、これが必要。
東芝は、日立の後追い企業になるのではなく、独自の強みをどこに置くのか、もっと具体的に焦点を絞って計画を練る必要があります。