三越伊勢丹HDの労働組合、恐るべし。
話の前提: 三越伊勢丹HDの大西洋社長が後任未定のまま辞任。抵抗勢力の存在。
三越伊勢丹HDが揺れています。まず、話の前提として、三越伊勢丹HDの社長が後任未定のまま辞任という話が最初に出ました。
上記記事を書いた時、大西社長辞任に関して、私の方では下記の2つの点について言及しています。
- ただ、多角化の責任とあるように、こういった多角化をやろうとする気持ちが強すぎた面はあるかもしれません
- 結局、いろんな面から、社内で大西社長に対する何かしらの抵抗勢力が出てきた、と。
ここで言う抵抗勢力というのは、多角化をしようとする大西社長に対しての抵抗勢力。抵抗勢力が敵になったと。
で、今回明らかになるのは、想像以上に三越伊勢丹で激しいバトルが繰り広げられていたこと。抵抗勢力として、現場と労働組合が絡んでいたこと。三越伊勢丹HDの労働組合が驚くほど強いということ。では見てみましょう。
三越伊勢丹HDの大西社長氏が辞任する背景: 三越伊勢丹HDの大西社長は収益の柱を増やそうと、多くの新規事業を進めてきた。大西氏のやり方に現場は反発、労働組合が大西社長の辞任を石塚会長に迫る。
日経新聞によると、辞任する大西社長は、従来の百貨店経営からの脱却に向けて、収益の柱を増やそうと、矢継ぎ早に新規事業を立ち上げてきたとのこと。
これに現場が反発して、労働組合が辞任を要求。経営から距離を置きつつあった石塚邦雄会長が辞任を迫る異常事態だったとのこと。
辞任に追い込まれた背景には、従来の百貨店経営からの脱却に向けて、矢継ぎ早に新規事業を立ち上げてきたことがある
大西氏は収益の柱を増やそうと、多くの新規事業を進めてきた
というわけで、今回、抵抗勢力が現場と労働組合であることが判明しました。しかし、現場と労働組合はどのように大西社長のやり方にキレていたのか、そして、どのように石塚会長が絡んでくるのか、それが下記。
なぜ現場と労働組合は大西社長の新規事業立ち上げに反発したのか。三越伊勢丹HDの労働組合はどのように石塚氏に大西氏辞任を要求したのか。大西氏の経営手腕を疑問視する内容の怪文書が出回る始末。
上記日経新聞によると、大西社長の新しい試みに現場社員の負荷は増え続けていたとのこと。
それでも、インバウンド(訪日外国人)や富裕層による消費が拡大している局面はよかったとのこと。
その効果がはがれ落ちると「『新規事業で収益を上げろ』と厳命されても対応できない」(関係者)と、隠れていたひずみが表面化。本業の立て直しに追われている中、最終的には労働組合の関係者が石塚氏に泣きつき、改善を強く要求する事態となったとのこと。
事態が動き出したのは4日午後。「現場がもうもたない。構造改革による混乱の責任をとりやめてもらいたい」。三越伊勢丹HD本社の一室で石塚氏は大西氏にこう切り出し辞表を差し出したとのこと。
この時期、大西氏の経営手腕を疑問視する内容の怪文書などが数多く社内外に飛び交っていたとのこと。
新しい試みに現場社員の負荷は増え続けていたが、インバウンド(訪日外国人)や富裕層による消費が拡大している局面はよかった
その効果がはがれ落ちると「『新規事業で収益を上げろ』と厳命されても対応できない」(関係者)と、隠れていたひずみが表面化
本業の立て直しに追われている中、最終的には労働組合の関係者が石塚氏に泣きつき、改善を強く要求する事態となった
事態が動き出したのは4日午後
「現場がもうもたない。構造改革による混乱の責任をとりやめてもらいたい」
三越伊勢丹HD本社の一室で石塚氏は大西氏にこう切り出し辞表を差し出した
なんと労働組合関係者が会長に直訴。で、会長が大西氏に、辞めてくれという事態。完全に社長降ろしの現場。
考察: 大西社長は12年から社長。三越伊勢丹HDは数字として営業利益が成長していない会社。大西社長の辞任は仕方がない面がある。しかし、労働組合の力が強すぎ、会長がこれに従うという事態に、社内がまとまっていない様子がうかがえる。
まず、労働組合の話はおいておきましょう。
大西氏がどんな改革をしてきたにせよ、上記で挙げた前回の記事でも書きましたが、数字から言えば、大西氏辞任は仕方がない面があります。
ここ数年見ても営業利益での成長がない、17年3月期は特に大不振(目標としていた営業利益500億円の半分以下の240億円見込み)。競合他社2社と比べて、営業利益が低く、差をつけられた感がある。
これが就任後ほんの数年ならまだ分かります。しかし、大西氏は12年から社長なわけです。インバウンドが減ったといっても、競合他社だってそれは同じ話で、それの対応が遅れているのは明らか。辞任という話が出ても仕方がないと思っています。
しかし、今回のミソは大西氏の辞任というより、労働組合が辞任要求して、石塚会長がこれに従っている点。辞任というより解任で、だから後任がいないような異常事態だったわけです。
しかも、怪文書が出回っていたという話。完全に大西氏降ろしの体制が整っていたわけです。
上記日経新聞によると、さらに指名報酬委員会に参加する社外取締役も一連の動きを問題視しているということを、大西氏は感じとっていたとのこと。その場で辞表にサインし辞任が決まったとのこと。大西氏自身は6月の株主総会での退任を考えていたが、それすらかなわなかったとのこと。
さらに指名報酬委員会に参加する社外取締役も一連の動きを問題視しているということを、大西氏は感じとっていた
その場で辞表にサインし辞任が決まった
大西氏自身は6月の株主総会での退任を考えていたが、それすらかなわなかった
その場で辞表にサイン。とんでもない事態です。
それにしても、三越伊勢丹の労働組合恐るべし。こんな状況だから、次の社長が融和派になるのも分かります。それが下記。
大西社長の後任として、杉江俊彦取締役専務執行役員(56)が4月1日付で社長に昇格。杉江氏は三越出身の石塚氏と近い存在で、社内融和、早期事態収拾に向けたバランス重視の人事か。本業の立て直しに力を入れる。
上記日経新聞によると、三越伊勢丹HDは7日、大西洋社長が辞任し、杉江俊彦取締役専務執行役員(56)が4月1日付で昇格すると発表したとのこと。
杉江氏が経営陣を前に発した言葉は「まずは事業の多角化よりも本業の立て直しに力を入れたい」とのこと。今までの経営方針からの決別宣言だったとのこと。
大西氏に代わって率いる杉江氏は三越出身の石塚氏と近い存在とのこと。社内融和、早期事態収拾に向けたバランス重視の人事と見る向きが多いとのこと。
経営環境が厳しい中、社内のバランスばかりに気を取られていたら生き残ることはおぼつかないとのこと。さらに、婚礼や飲食店、旅行事業など、多角化路線そのものは今の百貨店経営に不可欠とのこと。結果を出せなかった大西氏の手法を教訓に、いかに収益貢献できる体制を構築できるかが焦点とのこと。
三越伊勢丹HDは7日、大西洋社長(61)が辞任し、杉江俊彦取締役専務執行役員(56)が4月1日付で昇格すると発表した
杉江氏が経営陣を前に発した言葉は「まずは事業の多角化よりも本業の立て直しに力を入れたい」
今までの経営方針からの決別宣言だった
大西氏に代わって率いる杉江氏は三越出身の石塚氏と近い存在とされ、社内融和、早期事態収拾に向けたバランス重視の人事と見る向きが多い
社内のバランスばかりに気を取られていたら生き残ることはおぼつかない
さらに、婚礼や飲食店、旅行事業など、多角化路線そのものは今の百貨店経営に不可欠
結果を出せなかった大西氏の手法を教訓に、いかに収益貢献できる体制を構築できるかが焦点
注目: 三越伊勢丹HDの新社長は融和派。大西氏のやり方で使えるところをうまく採用し、労働組合ともうまく付き合う手法か。しかし、また百貨店一本足に近い経営に戻るのか、いったいどう舵取りをするのか。
杉江氏は、伊勢丹出身ですが、杉江氏は石塚氏に近い。これはつまり、三越系の人にも訴えかけるツテを持っているとみれます。
ちなみに、新社長の杉江氏は、慶應卒で伊勢丹出身です。慶應、伊勢丹出身、これは今回退任される大西氏と同じです。これまで大西氏の下で支えてきたことも考慮にいれると、これはつまり、大西氏のやり方というのも十分承知であろう人物。
結局、三越系、伊勢丹系と、うまく融和できそうな人物が社長に順当に昇格したわけです。
ただ、忘れてはいけないのは、三越伊勢丹HDは百貨店一本足に近い経営だったから、爆買いが減って厳しくなったという事実。今回、また百貨店重視といっているわけですから、逆戻りしようとしているのかともとられかねません。
三越伊勢丹HDの労働組合が恐ろしく強いということも分かりました。コスト削減の件はどうなるのか。いったい三越伊勢丹HDをどういう方向にもっていくのか。
そして何より、新社長は今後、どのように営業利益500億円を達成するのか、これに対する明確な経営プランを示す必要があるといえます。
杉江氏の経営手腕、そして、再び社内はまとまるのか、要注目です。