シルバーレイク・パートナーズ、ブロードコム。
東芝半導体売却の1次入札で、米投資ファンドのシルバーレイク・パートナーズと米半導体大手、ブロードコムが2兆円程度と高い買収額を提示か
日経新聞によると、東芝半導体での1次入札で、米韓台10社前後が名乗りを上げたとのこと。
そのなかで、30日に、米社から2兆円の買収提案があったことが分かったとのこと。米投資ファンドのシルバーレイク・パートナーズ、米半導体大手のブロードコムが2兆円程度と高い買収額を示したもようとのこと。
米韓台10社前後が名乗りを上げた
米社から2兆円の買収提案があったことが同日、分かった
そのなかで、米投資ファンドのシルバーレイク・パートナーズ、米半導体大手のブロードコムが2兆円程度と高い買収額を示したもようだ
東芝半導体メモリー事業分社で、29日に1次入札が締め切りました。今回は、ここでなんと2兆円を提示した企業があるという話。シルバーレイクとは何か、ブロードコムとは何か。
特にファンドの方を中心に話を進めましょう。
考察: 東芝半導体メモリーに2兆円提示のシルバーレイク・パートナーズは米ファンド。技術流出の点を明確にクリアできれば、ファンド・高値・日米同盟の観点から、2次入札行きの可能性が極めて高い。なぜシルバーレイク・パートナーズは東芝半導体に出資したいのか。
さて、私の方で2日前に下記の記事を書きました。
[東芝社外取締役の発言は重い] 東芝メモリ、経済界は技術流出を懸念。東芝社外取締役で経済同友会の小林喜光代表幹事は日米同盟について触れる。東芝メモリ1次入札締め切り日。
この記事で、私は「個人的には、ファンドがどの程度おもしろい提案をするのかに注目しています。」と書きました。
独占禁止法の観点からいえば、やはりファンドがどのような提案をするのか、ここに注目せざるを得なかったわけです。そして、今回、米ファンドのシルバーレイク・パートナーズの名前が挙がっているわけです。
ファンドで独占禁止法を気にする必要がなく、さらに同盟国の米国。2次入札行きの可能性は極めて高いといえるでしょう。
ただ、問題は、技術流出の点について。ここでうまく説得しないと話になりません。ここは話を破談にする爆弾になりえます(記事最後を参照)。
豆知識: 東芝メモリに2兆円提示のシルバーレイク・パートナーズはハイテク投資が得意なファンド。資金を集めるのにも長けている。デルMBOからデルとの結びつきが強く、Skype(スカイプ)をマイクロソフトに売却したのでも有名。
ところで、シルバーレイク・パートナーズはご存知でしょうか。
シルバーレイク・パートナーズは、ハイテク投資が得意なファンドです。最近で有名なのは、デルのMBO。でも、個人的には、skype(スカイプ)をマイクロソフトに売却したディールの印象を強く持っています。
デルにせよ、スカイプにせよ、ハイテク関連です。ハイテク投資が得意なファンド。資金を集めるのにも長けています。東芝メモリに2兆円提示もうなずけます。
そして、特におもしろいのが、デルとの相乗効果について。上記日経新聞によると、シルバーレイクはIT大手デル・テクノロジーズに出資しており相乗効果が見込めるとのこと。
シルバーレイクはIT大手デル・テクノロジーズに出資しており相乗効果が見込める
シルバーレイク・パートナーズは、デルとのこれまでのいきさつを考えても、デルとの結びが強いといえます。当然デルと組み合わせたいところでしょう。相乗効果と言う意味では、シルバーレイク・パートナーズは十二分に考えているでしょう。
ただ、記事最後で書くように、今回は技術流出などの点も非常に重要になってくるので、ここでどのように説得するか、ここもポイントです。
豆知識: 東芝メモリに2兆円提示のブロードコム。ブロードコムはこれまで注目されてなかった。
さて、話の中心がシルバーレイクパートナーズになりましたが、やはりどうしても言及するべき会社があります。ブロードコムです。
ブロードコムは米半導体の上場企業。買収も積極的に行っている会社。つい昨年の11月に、ブロケードを59億ドルで買収すると発表もしています。つまり、6000億円以上の買収を進行中なわけです。
ブロードコムはこれまで注目されてこなかっただけに、ちょっとおもしろい存在であるといえます。
上記日経新聞によると、ブロードコムは企業向け通信機器用半導体をまとめて取り込む狙いとのこと。
ブロードコムは企業向け通信機器用半導体をまとめて取り込む狙い
豆知識: 東芝半導体事業に2兆円提示は、細川社長の最低ライン
ところで、そもそも2兆円を提示することの意味について。東芝の細川社長は29日の記者会見で、2兆円は最低ラインとしていました。2兆円。巨額です。
上記日経新聞によると、東芝は3月末には6200億円前後の債務超過となる見込みとのこと。穴埋めに半導体メモリー売却が不可欠で、税金を考慮すれば1兆円規模の売却益が必要とのこと。メモリー事業の純資産は5千億~6千億円程度とみられ、1兆円の売却益を得るには1兆5千億円程度で売却しなければならないとのこと。
東芝は3月末には6200億円前後の債務超過となる見込み
穴埋めに半導体メモリー売却が不可欠で、税金を考慮すれば1兆円規模の売却益が必要
メモリー事業の純資産は5千億~6千億円程度とみられ、1兆円の売却益を得るには1兆5千億円程度で売却しなければならない
というわけで、2兆円で売れれば、1兆円を優に超える売却益を確保できるというわけです。細川社長の最低ラインを越えてきており、やはり東芝半導体の予想通りの大人気ぶりなのがよく分かります。
最後に、技術流出の点と今後の日程について確認しておきましょう。
東芝メモリ、2兆円提示でも、技術流出の点はクリアする必要あり
冒頭の記事の中で私は、「ただ、ファンドに渡るにせよ、将来的な売却、技術流出の点については徹底的に議論する必要があります。」と書きましたが、ファンドだろうと会社だろうと、この技術流出への警戒は政府の関心ごとでもあります。
上記日経新聞によると、東芝の半導体メモリーは機密情報を管理するデータ記憶装置「ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)」にも使われており、高度な暗号化技術が組み込まれているとのこと。軍事や外交などにかかわる機密情報の漏洩につながりかねないだけに、海外勢への売却には日本政府も警戒を示すとのこと。
外資企業が出資する場合は外為法による事前審査が必要になるとのこと。経済産業省は同盟国でもある米国の企業が望ましいとみているもようとのこと。
経産省幹部は「技術流出がなく、四日市工場の成長にもつながる。この2つが実現できるかどうか」と話すとのこと。再建手法の詳細を詰めるなかで、日本政策投資銀行や産業革新機構に協力を求める方向で調整するとのこと。
東芝の半導体メモリーは機密情報を管理するデータ記憶装置「ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)」にも使われており、高度な暗号化技術が組み込まれている
軍事や外交などにかかわる機密情報の漏洩につながりかねないだけに、海外勢への売却には日本政府も警戒を示す
外資企業が出資する場合は外為法による事前審査が必要になる
経済産業省は同盟国でもある米国の企業が望ましいとみているもよう
経産省幹部は「技術流出がなく、(半導体メモリーを生産する東芝の)四日市工場の成長にもつながる。この2つが実現できるかどうか」と話す
再建手法の詳細を詰めるなかで、日本政策投資銀行や産業革新機構に協力を求める方向で調整する
やはり、これを見ても、技術流出の点についてはしっかり明確にしてもらう必要があるといえます。
今後の日程はどうでしょうか。
上記日経新聞によると、東芝は4月以降、技術流出対策や雇用計画も含め、候補企業を絞り2次入札に入るとのこと。将来の株式転売の意向なども確認し、東芝幹部は「6月下旬の定時株主総会前までには決めたい」としているとのこと。
東芝は4月以降、技術流出対策や雇用計画も含め、候補企業を絞り2次入札に入る
将来の株式転売の意向なども確認し、東芝は「6月下旬の定時株主総会前までには決めたい」(幹部)としている