日本の超大富豪の生前贈与をめぐる話。
キーエンスの創業者、滝崎武光名誉会長の長男が株式贈与で1500億円を超える申告漏れ
日経新聞によると、キーエンスの創業者、滝崎武光名誉会長の長男が大阪国税局の税務調査を受けたとのこと。
創業者の長男は、大阪国税局に、贈与された資産管理会社の株式を巡り1500億円を超える申告漏れを指摘されたことが16日、関係者への取材で分かった
まず読み方ですが、キーエンス創業者は「たきざきたけみつ」氏です。ご存知の方も多いでしょう。日本の超大富豪として有名な方です。
キーエンス創業者の滝崎武光氏について
上記日経新聞によると、滝崎氏は1974年、キーエンス前身のリード電機を設立。2000年まで社長、15年まで代表権を持つ会長を務めた。
滝崎氏は1974年、キーエンス前身のリード電機を設立
2000年まで社長、15年まで代表権を持つ会長を務めた
この方はガチの金持ちです。昨年の2015年に一線から退きましたが、2015年のBloombergによると、その時の個人 資産は72億ドル(約8400億円)で国内4位だったとのこと。
個人 資産は72億ドル(約8400億円)で国内4位
おそろしいでほどの大富豪でしょう。
あと、キーエンスという会社。これまたけっこうすごい会社で、高収益企業で有名な会社であります。
そんな高収益企業を作り上げた創業者の株式贈与をめぐる今回の1500億円という巨額の申告漏れ報道。一体どうなっているのでしょうか。
キーエンス創業家の親子間の贈与、追徴税額は過少申告加算税を含め300億円超か
上記日経新聞によると、株式の評価が著しく低いと判断されたといい、追徴税額は過少申告加算税を含め300億円超とのこと。既に全額納付したもようだとのこと。
株式の評価が著しく低いと判断されたといい、追徴税額は過少申告加算税を含め300億円超
既に全額納付したもよう
株式評価方法が問題だったと。下記がそのスキーム。
キーエンス創業者(名誉会長)の滝崎氏の株式贈与方法について
上記日経新聞によると、滝崎家の資産管理会社「ティ・ティ」はキーエンスの発行済み株式の17%超(約7800億円相当)を保有するとのこと。
滝崎氏らはティ社株を現物出資して新たに非上場の資産管理会社を設立し、数年前、新会社の株式を長男に贈与したとのこと。
滝崎家の資産管理会社「ティ・ティ」(非上場、大阪府豊中市)はキーエンスの発行済み株式の17%超(約7800億円相当)を保有
滝崎氏らはティ社株を現物出資して新たに非上場の資産管理会社を設立し、数年前、新会社の株式を長男に贈与
これは非常におもしろい話です。要するに、今回のスキームは、この新会社を設立することであったとみていいでしょう。下記でもう少し具体的に見て説明します。
キーエンス創業家の贈与株についての国税庁の見方は
上記日経新聞によると、国税庁は取引相場のない非上場株の評価額は、業種や事業内容が類似する上場企業の株価などを基に算定するよう通達で求めているとのこと。
長男は通達に沿って新会社株を評価したというが、新会社がティ社を通じて大量のキーエンス株を間接保有していることから、国税局は評価が過小だと認定したもようだとのこと。
国税庁は取引相場のない非上場株の評価額は、業種や事業内容が類似する上場企業の株価などを基に算定するよう通達で求めている
長男は通達に沿って新会社株を評価したという
新会社がティ社を通じて大量のキーエンス株を間接保有していることから、国税局は評価が過小だと認定したもよう
滝川家の株式相続をめぐる問題を簡単に整理
ちょっと整理しましょうか。
今回のポイントは、滝川名誉会長が、この新会社の株式を長男に贈与している点です。
そんでもって、強調しないといけないのは、上記日経新聞によると、この新会社はティ・ティを事実上支配していたという点でしょう。
事実上支配
なぜこの点が重要なのか。それは、新会社の事実上の支配下にあったティ・ティという会社は、資産管理会社であり、キーエンス株を17%保有しているからです。
下記で結局何をしていたのか書きます。
要するに滝崎武光氏は長男に、通常の時価評価よりも低い評価となる、非上場株式を贈与したということ。大阪国税局はこれを著しく不適当と認めた。
結局今回のポイントは、滝崎家が通常の時価評価よりも低い評価で株式を評価していたと認定された点なわけですが、これがなぜ起こったのか。
日経新聞によると、相続税法は相続や贈与で取得した財産について、時価で評価して申告税額を算出すると規定とのこと。ただ、非上場株式のような取引相場がない資産の価値を通達に従い算定すると、実際より極端に低い評価となる場合もあるとのこと。
このため通達は総則第6項で、規定に基づく評価が「著しく不適当」と認められる場合、国税庁長官の指示で評価を改めることができると定めるとのこと。長男は
「類似する上場企業の株価などに基づき算定する」
とした規定に沿って評価したうえで申告したとのこと。しかし、国税局はこの評価額を認めなかったとのこと。
相続税法は相続や贈与で取得した財産について、時価で評価して申告税額を算出すると規定
ただ、非上場株式のような取引相場がない資産の価値を通達に従い算定すると、実際より極端に低い評価となる場合もある
このため通達は総則第6項で、規定に基づく評価が「著しく不適当」と認められる場合、国税庁長官の指示で評価を改めることができると定める
長男は「類似する上場企業の株価などに基づき算定する」とした規定に沿って評価したうえで申告
しかし、国税局はこの評価額を認めなかった
実質ティ・ティを支配していた新会社。その新会社の株を贈与し、評価していた。そんでもって、この評価の仕方だと、けっこう低く評価できたってことですよ。
滝崎氏と長男の1500億円申告漏れに関するコメント
上記日経新聞によると、日本経済新聞はキーエンスを通じ、滝崎氏と長男に事実関係の確認を求めたが、16日現在で回答はないとのこと。
日本経済新聞はキーエンスを通じ、滝崎氏と長男に事実関係の確認を求めたが、16日現在で回答はない
スキームとしては実におもしろいスキームでした。今後創業家からコメントはあるのでしょうか。