実に多くのドラマがあっただろう、今回の結果。

 

武田子会社の和光純薬買収争奪戦の結果までの経緯

結論からいえば、下記で書いていくように、今回、富士フィルムが和光純薬を買うことになりました。下記で、今回の買収争奪戦の本当の勝者は誰だったのか、そして、なぜ富士フィルムが和光純薬買収競争で勝利したのかなど、考察してみたいと思います。この買収争奪戦の裏に見えるドラマ。

 

和光純薬買収争奪戦に関して、私は当初から追ってきました。いろいろなところで記事を紹介していただき、かなり多くの方に記事を読んでいただきました。感謝。

 

まずは手短に、これまでの経緯を簡潔にまとめましょう。まだ知らないネタがあったらぜひチェックしてみてください。この背景を知っておくだけでも、今回の争奪戦がかなり興味深いものであったと思っていただけるかと思いますので。

 

ステップ1 武田が試薬トップランナーの和光純薬を売ることに。富士フィルムが日本企業として買収に名乗りだす。

まず、武田が和光純薬という武田とかつては一心同体だった会社を売ることを決めました。ここで問われたのは武田の覚悟。そんな中、日本企業として手をあげたのが、富士フィルム。

[最大1000億円の買収] 富士フイルム、武田薬品子会社の和光純薬工業、買収提案。武田はなんと、もともと分社化した会社の和光純薬工業の売却で、勝負に出る。いろいろサプライズ

 

ステップ2 和光純薬買収争奪戦に日立が手をあげる。日立は日立化成を筆頭に、日立本体も影を見せる。これで和光純薬買収戦のゆくえが混迷を極めた。

富士フィルムが手をあげた後、なんと日立も手をあげるという結果に。日立の手の上げ方を私のほうでは分析しましたが、日立の動きがおもしろかった。これで和光純薬をどこが買うのかがわからなくなってきました。

なんと日立製作所(日立化成)も和光純薬工業に買収提案。富士フィルムはまた大手と争奪戦へ。武田子会社の買収合戦

 

そして、ステップ3が今回の結果です。今回要注目なのは、その買収金額と、富士フィルムがどのくらい和光をほしかったのかという点。以下見ていきます。

 

 

富士フイルムホールディングスが武田薬品工業傘下の試薬大手、和光純薬工業を買収する。和光純薬買収総額は2千億円規模になる見通し。月内にも基本合意、2016年度中に手続き完了をめざす。

日経新聞によると、富士フイルムホールディングスは武田薬品工業傘下の試薬大手、和光純薬工業を買収するとのこと。買収総額は2千億円規模になる見通しで、武田と最終調整に入ったとのこと。月内にも基本合意し、2016年度中の手続き完了をめざすとのこと。

 

  • 富士フイルムホールディングスは武田薬品工業傘下の試薬大手、和光純薬工業を買収する
  • 買収総額は2千億円規模になる見通し
  • 武田と最終調整に入った
  • 月内にも基本合意し、2016年度中の手続き完了をめざす

 

和光純薬買収争奪戦の結果が遂に出ました。結果、富士フィルムが和光純薬を買収することに。富士フィルムは試薬のトップランナーの獲得、おめでとうございます。さて、ここからは私の推測がだいぶ混じってきますが、2つの点を以下展開していきたいと思います。

 

  1. 今回の和光純薬買収戦の真の勝者は武田薬品工業。武田は和光純薬を2000億円という高値で売った。バリアントの胃薬事業買収交渉までしている。武田を本気で変えようとするキーマンが、ウェバー社長以外にいる可能性あり。
  2. 富士フィルムは和光純薬をどうしても買収したかった。メンツも保てた。富士フィルムは日立化成が定めた上限額を上回る最高額を提示。いまだに古森CEOの絶大的影響力は健在か。和光を生かすも殺すも富士フィルムの力量しだい。

 

以下、見ていきましょう。

 

 

1.今回の和光純薬買収戦の真の勝者は武田薬品工業。武田は和光純薬を2000億円という高値で売った。バリアントの胃薬事業買収交渉までしている。武田を本気で変えようとするキーマンが、ウェバー社長以外にいる可能性あり。

今回の真の勝者はズバリ、和光純薬を売却する武田です。これはもう売却額からいってもそうだと思います。当初言われていた売却額は、1000億円超。結果は2倍ですよ、2倍。

 

これまで武田はいまいちぱっとしなかった。ウェバー社長就任以来も同じことですよ。なのに、和光純薬という一心同体だった会社を売ることに決めた時点で、何か武田の中で、決意したことがあったと思われます。

 

さらにいえば、武田はバリアントの胃薬事業買収交渉をしています。これは1超400億円規模といわれています。

[武田が約1兆400億円の買収交渉] 武田がバリアントの胃腸薬事業を買収交渉。消化器系疾患分野で勝負をかけにきたのか。武田が巨額買収へ動く

 

これは和光純薬の件で、おれらけっこうできるなといった流れの中でもでてきた話かとは思います。こんなでかい案件を同時並行で進めている。

 

ウェバー社長が本気で改革に望む決心をしたのは確かかもしれませんが、おそらく、ウェバー社長以外で、これを主導していたキーマン、もしくは、影響力のある人物がいたはず。その人物は、けっこうな戦略家でしょう。

 

武田に何があったにせよ、結果としてみれば、和光純薬を2倍の値段で売ることに成功。結局、武田が今回の真の勝者でしょう。武田にとってあと重要なのは、この資金の使い道、そして、今後も選択と集中を本気でするという意思表示。一心同体だった企業を売ったわけですから、中途半端なことされたら、関係者はたまらないですからね。

 

 

2.富士フィルムは和光純薬をどうしても買収したかった。メンツも保てた。富士フィルムは日立化成が定めた上限額を上回る最高額を提示。いまだに古森CEOの絶大的影響力は健在か。和光を生かすも殺すも富士フィルムの力量しだい。

富士フィルムが和光純薬という試薬のエースを買収したわけです。しかも、競合がたくさんいる中で。競合はどこだったか。上記日経新聞によると、10月に実施した最終入札には富士フイルムと日立製作所子会社の日立化成、米投資ファンドのカーライル・グループの3陣営が応札していたとのこと。

 

富士フイルムの提示額は日立化成が応札にあたってあらかじめ定めた上限額を上回り、最高額になったとのこと。武田側は優先交渉先を富士フイルムとする方針を関係先に伝え始めたとのこと。

 

  • 10月に実施した最終入札には富士フイルムと日立製作所子会社の日立化成、米投資ファンドのカーライル・グループの3陣営が応札していた

  • 富士フイルムの提示額は日立化成が応札にあたってあらかじめ定めた上限額を上回り、最高額になった

  • 武田側は優先交渉先を富士フイルムとする方針を関係先に伝え始めた。

 

さて、富士フィルムは日立化成が定めた上限を上回り、最高額を提示した。富士フィルムはどうしても和光純薬がほしかったんですよ。あと、負けられなかったというのもあります。それが下記。

 

 

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なぜ富士フィルムは和光純薬をどうしても買収したかったのか。なぜ富士フィルムは和光純薬買収争奪戦で負けることができなかったのか。古森CEOは年を感じない元気さ。

さて、なぜ富士フィルムは和光純薬をどうしても買収したかったのか。

 

上記日経新聞によると、富士フィルムは既に和光株の10%弱を持つ第2位株主とのこと。今回の買収で和光のノウハウを生かした創薬やがん診断、新興国の検査薬市場開拓も進められるとみているとのこと。

 

  • 富士フィルムは既に和光株の10%弱を持つ第2位株主

 

そうです。富士フィルムは既に和光純薬の筆頭株主(武田に次ぐ第2位の株主)なわけです。和光純薬が何をしているのか、十二分に知っているし、関係も築いてきたわけです。ここで負けると、競い買ったライバルが筆頭株主になるだけでなく、これまで築いてきた和光純薬との関係の意味も問われてくることになるわけです。

 

さらにいえば、以前書いたように、富士フィルムは東芝メディカルシステムズでキャノンに競い負けています。今回もし再び負けていたら、こういわれていたでしょう。「富士フィルム、再び敗れたり」。

 

富士フィルムには、古森CEOという絶大的権力をもったカリスマがいます。私も講演を聞きに言ったことがありますが、負けん気が強そうな方。ちなみに、この古森CEOこそ、富士の医療分野をM&Aによって開拓してきた人物であり、この方の戦略のもと、富士フィルムは医療分野のM&Aなどにより、さらなる巨大企業になるという展望ももったわけです。

 

そんな古森CEOの絶大的影響力のもと、今回は絶対に和光を獲る。そんな決意があったのではないでしょうか。しかし、今回は富士フィルムが力あるところは見れましたね。

 

さて、最後に、なぜ和光純薬が魅力的な企業なのか、また、富士フィルムがどのように和光を活用していきそうか、記しておきましょう。

 

 

和光純薬は、難病治療のカギを握る胚性幹細胞(ES細胞)やiPS細胞の培養に使う試薬など有望技術を持っている

上記日経新聞によると、和光純薬は、難病治療のカギを握る胚性幹細胞(ES細胞)やiPS細胞の培養に使う試薬など有望技術を持っており、医療事業の強化を狙う企業や海外投資ファンドなどが関心を寄せていたとのこと。富士フイルムは今回の買収で和光のノウハウを生かした創薬やがん診断、新興国の検査薬市場開拓も進められるとみているとのこと。

 

  • 和光純薬は、難病治療のカギを握る胚性幹細胞(ES細胞)やiPS細胞の培養に使う試薬など有望技術を持っており、医療事業の強化を狙う企業や海外投資ファンドなどが関心を寄せていた

  • 富士フイルムは今回の買収で和光のノウハウを生かした創薬やがん診断、新興国の検査薬市場開拓も進められるとみている

 

今後、この和光純薬を生かすも殺すも富士フィルムしだい。売り手の武田がこれからも暴れ続けるかどうか、そして、富士フィルムがどのようにの和光を活用していきそうか。今後もこの両社に要注目していきたいと思います。

 

[更新] この1か月半後、富士フィルムが正式発表しました。この話の続きが読みたい方は、こちらの続編の記事をどうぞ。

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