2割前後の相互出資という形をとった。

 

合併をめざす出光興産と昭和シェル石油は、合併前に資本・業務提携する調整に入った

日経新聞によると、合併をめざす出光興産と昭和シェル石油は6日、それに先行して資本・業務提携する調整に入ったとのこと。互いに2割前後の株式を持ち合い、製油所や石油製品の物流などの一体運営を始めるとのこと。

 

  • 合併をめざす出光興産と昭和シェル石油は6日、それに先行して資本・業務提携する調整に入った

  • 互いに2割前後の株式を持ち合い、製油所や石油製品の物流などの一体運営を始める

 

出光と昭和シェルが資本・業務提携します。

 

 

簡単に復習: 創業家説得なしには、出光と昭和シェル合併はほぼ無理

念のため、出光と昭和シェルの合併問題について、ご存知ない方のために、ごく簡潔に復習しましょう。

 

出光と昭和シェルは合併を模索しています。しかし、出光の創業家が反対しています。創業家の筆頭は出光昭介氏。89歳の権力者です。

 

創業家まとめて、出光の株式の3分の1を握っていますから、この創業家の説得なしには合併は厳しい話。創業家すっ飛ばして合併しようとすると、主にTOBと増資が考えられていました。

 

ただ、両方とも現実的には無理。TOBだと値段が高くなりすぎ、財務を圧迫するから。増資は創業家が反対してるけれどど合併したいからという理由で増資すると、既存株主が許さない。よってこの案も却下。

 

結局、創業家の説得がキーなわけです。

 

で、今回、相互出資という形をとり、まずはお互い協力しあって信頼関係も深め、ほれ、一緒にできるじゃないか、相互出資効果がこんなにあったぞ、といったあたりをアピールして創業家を説得しようとしているとみていいでしょう。

 

出光、昭和シェル両社にとっては、あの手この手を使って創業家の説得に動いているともみれます。

 

さて、具体的な相互出資のありかたについてみてみましょう。

 

 

出光と昭和シェルはどのように2割前後の相互出資をするのか

上記日経新聞によると、両社は合併に向け、公正取引委員会による審査を受けているとのこと。出光は公取委からの承認を得た後、数日以内に英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル(RDS)から33.24%の昭シェル株を取得。このうち8%超の株式を信託銀行に預けることで、議決権ベースの出資比率を25%未満に抑える方向とのこと。

 

一方、昭シェルは2割程度の出光株を取得する予定とのこと。取得方法など詳細は今後検討するとのこと。

 

  • 両社は合併に向け、公正取引委員会による審査を受けている
  • 出光は公取委からの承認を得た後、数日以内に英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル(RDS)から33.24%の昭シェル株を取得
  • このうち8%超の株式を信託銀行に預けることで、議決権ベースの出資比率を25%未満に抑える方向
  • 一方、昭シェルは2割程度の出光株を取得する予定
  • 取得方法など詳細は今後検討する

 

微妙にややこしくもみえますが、そうでもありません。まず、昭和シェルが20%ほど出光株を取得予定というのは文字通り。

 

出光サイドですが、出光がまず、ロイヤル・ダッチ・シェルから33.42%の昭和シェル株を取得。

 

この33.4%ですが、これは最初からこの比率で、と話が進んでいたわけですから、ここの変更はなし。

 

出光は33.42%を得たのち、8%超を信託銀行に預ける。結果、25%未満が残る。

 

仮に10%預けるとすると、

出光の昭和シェル株=33.42%-10%=23.42%が手元に残る→〇

 

8%超というのがミソで、8%よりも多くないといけません。

 

例えばもし信託銀行に預ける金額がちょうど8%だったなら、

出光の昭和シェル株=33.42%-8%=25.42%が手元に残る→×

 

これではいけないと判断したのが今回。ではなぜ25%より下にしたいのか。それが下記。

 

 

なぜ出光は昭和シェルへの出資比率を25%未満に抑えるのか

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上記日経新聞によると、出光が昭シェルへの出資比率を25%未満に抑えるのは、昭シェルの出光に対する議決権を確保するためとのこと。

 

会社法では25%以上の株式を保有された会社は、相手先の企業の株式を取得しても議決権が無効になる規定があるとのこと。昭シェル側には出光に25%以上の株式を一方的に持たれれば「経営の独立性が毀損される」との懸念があり、出光側が配慮したとのこと。

 

  • 出光が昭シェルへの出資比率を25%未満に抑えるのは、昭シェルの出光に対する議決権を確保するため

  • 会社法では25%以上の株式を保有された会社は、相手先の企業の株式を取得しても議決権が無効になる規定がある

  • 昭シェル側には出光に25%以上の株式を一方的に持たれれば「経営の独立性が毀損される」との懸念があり、出光側が配慮した

 

同等な立場での合併を模索しているわけですから、当然の結果かと思います。

 

 

なぜ出光と昭和シェルは相互出資、資本業務提携という形をとることにしたのか。出光、昭和シェルはまず業務提携で効果を先行して出す意向。

上記日経新聞によると、合併は株主総会の決議案件。3分の1を超える出光株を持つ創業家が反対すれば合併はできないとのこと。ただ今回のような資本業務提携なら、総会案件ではないため、両社が合意すれば実現するとのこと。

 

両社は提携で実績を上げながら説得を続けるとのこと。両社の幹部は「合併を目指す方針に変わりはない。まず業務提携で効果を先行して出していきたい」と語るとのこと。

 

  • 合併は株主総会の決議案件。3分の1を超える出光株を持つ創業家が反対すれば合併はできない

  • ただ今回のような資本業務提携なら、総会案件ではないため、両社が合意すれば実現する

  • 両社は提携で実績を上げながら説得を続けるとのこと。両社の幹部は「合併を目指す方針に変わりはない

  • まず業務提携で効果を先行して出していきたい」と語る

 

創業者の合意なしでも資本業務提携ならできる。それをまさにまずはやろうとしています。

 

 

出光と昭和シェルは、資本業務提携によってどの程度の収益改善効果を見込むのか。具体的にどのように出光と昭和シェルは提携するのか。

上記日経新聞によると、年300億円程度の収益改善効果を見込むとのこと。両社は株式の持ち合いと並行し、国内に7カ所ある製油所の一体運営や、約7000カ所の給油所への製品供給などで提携するとのこと。合併により計画する年500億円の統合効果には及ばないが、事業提携で年300億円程度の収益改善が見込めるとのこと。

 

  • 年300億円程度の収益改善効果を見込む

  • 両社は株式の持ち合いと並行し、国内に7カ所ある製油所の一体運営や、約7000カ所の給油所への製品供給などで提携する

  • 合併により計画する年500億円の統合効果には及ばないが、事業提携で年300億円程度の収益改善が見込める

 

年300億円もの収益改善が見られるとは、それだけでも素晴らしい。収益だけでなく、同時に、運営などでうまく一緒にやっていけるというあたりを示す。そして、創業一族を納得させる。

 

両社の経営陣の策はうまくいくのか、要注目です。

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