ニコンはかつて隆盛を誇った半導体装置の合理化を発表。ニコンとASML、何が違ったのか。今年のASMLの攻勢もインパクトが強すぎた可能性も。

 

話の前提: ニコンのリストラと緊急性が高い半導体製造装置事業の合理化。

ニコンのリストラについては、昨日取り上げました。

[ニコンが1000人リストラで構造改革へ動く] ニコンが1000人削減。ニコンの熊谷製作所などで希望退職募集。なぜニコンがリストラへ動くのか考察する

 

まだ読んでおられない方は、ぜひ一読ください。今回は、このリストラの記事の話を前提に話を進めていきます。話の焦点は、ニコンの半導体製造装置がなぜシェアを奪われたのか、及び、ASMLという巨人の存在について。

 

余談: プロフィール写真は、ニコンの会社で、ニコンの方に、ニコンのカメラで撮っていただいた

ところで、昨日も少し書きましたが、私は、個人的に、素晴らしい方をニコン内部で知っています。ちなみに、私のプロフィールの写真も、ニコンの会社で撮影会を開き、ニコンの方に、ニコンのカメラで撮っていただきました。

 

これは私にとっては、大変思い出となった話。少々長くなるので、これに関しては、また別の機会に再び語りたいと思っています。ニコン内部に人間として非常に素晴らしい方がいると知っているということもあり、今回の件もいろいろ考えさせられる話ではあります。

 

さて、今回は、カメラではなく、半導体装置の話が焦点となります。昨日も書いたように、この分野のリストラの緊急性が高いと思われるので。以下見ていきます。

 

 

かつてニコンは日の丸半導体の製造技術をけん引。ニコンの半導体製造装置事業は、日本産業史の金字塔。ニコンのはインテルなど世界中からひっぱりだこだった。変化が起こったのは2000年前後。ASMLが一気に勢力を伸ばす。

日経新聞によると、ニコンの半導体製造装置事業は、日本産業史の金字塔とのこと。米インテルなど世界の半導体企業から引く手あまたの存在だったとのこと。かつて隆盛を誇った「日の丸半導体」の製造技術をけん引した「名門」の面影はもうないとのこと。

 

  • 日本産業史の金字塔

  • 米インテルなど世界の半導体企業から引く手あまたの存在

  • かつて隆盛を誇った「日の丸半導体」の製造技術をけん引した「名門」の面影はもうない

 

なお、ここで上記日経新聞では、非常に興味深いデータを示しています。1993年のニコンの半導体露光装置販売シェアは48.4%としています。ニコンだけで半分近くの世界シェアを誇っていたわけです。

 

それが変化するのが2000年前後。上記日経新聞によると、2000年前後に変調が起きたとのこと。台頭したのはオランダのフィリップスから84年に独立したASMLとのこと。

 

  • 2000年前後に変調

  • 台頭したのはオランダのフィリップスから84年に独立したASML

 

ASMLは今日では半導体製造分野で世界最大手といわれていますが、勢力を伸ばしたのは2000年代に入ってからです。上記日経新聞で示されているデータによると、2015年のニコンの半導体露光装置販売シェアは12.1%に激減。一方、ASMLは驚きの81%。世界最大手というのも納得の数字でしょう。

 

さて、ニコンとASMLの違いはなんだったのか。それが下記。

 

 

ASMLは、技術を開放して外部の研究機関やレンズなど部材企業と連携する「オープンイノベーション」の手法で躍進。一方、ニコンは技術を「ブラックボックス」にして、自前主義を貫いた。ニコンの半導体露光装置での挽回は不可能。

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上記日経新聞によると、ASMLは技術を開放して外部の研究機関やレンズなど部材企業と連携する「オープンイノベーション」の手法で、機動的に製品を投入したとのこと。

 

対するニコンは技術を「ブラックボックス」にして、自前主義を貫いたが、結果ははっきりと表れたとのこと。岡昌志副社長兼最高財務責任者(CFO)は記者会見で「挽回は不可能」と白旗をあげたとのこと。

 

  • ASMLは技術を開放して外部の研究機関やレンズなど部材企業と連携する「オープンイノベーション」の手法で、機動的に製品を投入した

  • 対するニコンは技術を「ブラックボックス」にして、自前主義を貫いたが、結果ははっきりと表れた

  • 岡昌志副社長兼最高財務責任者(CFO)は記者会見で「挽回は不可能」と白旗をあげた

 

副社長自ら、「挽回は不可能」という意味は大きなものです。あと、私のほうで強調したいのは、最近のASMLの勢いはさらに増しているという点です。このあたりも、ニコンにさらなる危機感を抱かせた可能性が高いと思っています。それが下記。

 

 

ASMLは今年、エルメス・マイクロビジョンという大きな買収とカールツァイス子会社への出資を発表。ASMLは規模を拡大し、露光装置事業で最先端分野の技術へ資金を投入し続ける。これにニコンはさらなる危機感を覚えたか。

ASMLは今年、大きな買収をしています。台湾の半導体検査装置大手の漢民微測科技(エルメス・マイクロビジョン)という会社の買収です。以前の日経新聞によると、買収額は約3200億円としています。

 

さらについ先日、ASMLはカールツァイスの子会社に出資も発表しています。以前の日経新聞によると、出資額は1140億円となっています。

 

これら2つからいえること。それは、ASMLが半導体事業(露光装置事業)において、規模の大きさを生かし、さらなる最先端分野の技術を生み出そうとお金を投じているということです。

 

ニコン経営陣としては、ただでさえシェアが大きいASMLが、さらに最先端技術への投資を猛烈に拡大しているということで、これはたまったもんじゃないなというのが本音だと思いますね。

 

すると、挽回は不可能という言葉の意味と重みもよくわかるかと思います。

 

 

ニコンは露光装置事業を今後どうしていくのか。ニコン経営陣の露光装置事業への将来の展望は。

上記日経新聞によると、岡副社長は「露光装置事業の売却や清算も検討した」と明かしたが、当面は開発費を削減し、利益が見込める案件に絞って受注活動をするとのこと。その上で「18年3月期までに露光装置事業を黒字にする」と強調したとのこと。

 

  • 岡副社長は「露光装置事業の売却や清算も検討した」と明かしたが、当面は開発費を削減し、利益が見込める案件に絞って受注活動をする

  • その上で「18年3月期までに露光装置事業を黒字にする」と強調した

 

ニコンは露光装置事業を清算するのではなく、利益が見込める案件に絞ってマーケットに残る。これが、ニコン経営陣の決断です。

 

露光装置事業を黒字にするということも強調しています。ニコン経営陣には、露光装置事業の早期黒字化の達成をぜひしてもらい、さらに、今後ニコンがどのようなマーケットのポジションをとってくのか、明確に語っていただきたく思います。

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