どう考えても狙いは一つ。
私のほうでは日立の事業売りの話をここのところ多く書きましたが、今回は日立が買いに行きます。買収額がまたすごい額。
日立がアキュダイン社からアキュダイン社子会社で空気圧縮機製造販売をするサルエアー事業を買収。日立のサルエアー買収額は1357億円予定。
日立によると、日立はアキュダイン社から子会社のサルエアー事業を1357億円で買収するとのこと。
サルエアーはサルエアーブランドで空気圧縮機の製造・販売を手掛けるとのこと。
豆知識: 日立が買収するサルエアー、アキュダイン社の子会社。アキュダイン社はカーライル関連会社が半分株式を握る有名な会社。カーライルといえば日立工機売却で一時登場した会社、あの時に関係を深めた。
なお、今回買収するのはアキュダイン子会社のサルエアーですが、親会社のアキュダインは超有名な会社です。
アキュダインの株式の半分はカーライル関連会社が握っています。カーライルは投資会社。
カーライルといえば、日立工機買収に関心を寄せていた投資会社です。結果としてKKRが日立工機を買収しましたが、あの時から日立とは関係が深まっているとみていいでしょう。
考察: サルエアーの売上は落ちてきており、当期純利益に関していえばここ数年はマイナス。サルエアーという赤字の会社を日立が欲しいのは、どう考えてもサルエアーの北米販売網が欲しいから。産業系デジタルソリューション事業の北米展開が狙いか。
なお、サルエアーは北米で大きくやってる会社です。米コンプレッサー大手。
大手というからには販売網も大きいと考えられますが、現に、日立曰く、サルエアーの北米販売網はでかい。特に、日立と比べて北米で強い。
日立の説明では、日立の販売店数が約50社、エンドユーザーが約200社である一方、サルエアーは販売店数が約200社、エンドユーザーは約4000社としています。
販売店数は日立の4倍、エンドユーザーに関していえば、日立の20倍ものエンドユーザーです。
ただ、この会社。
日立の資料では、当期純利益が2015年、2016年とマイナス。
売上だって、2014年から見て2016年にかなり落ちています。
こういう会社を日立は買いに行っているという認識はしておいたほうがいいでしょう。
これはつまり、サルエアーの製品をどうしても買いたいというより、サルエアーの北米での販売網が欲しい、そしてこれを土台にしたいという考えがあるのでしょう。
しかし、日立はいつからそんなに空気圧縮事業に対して思い入れが強くなったのか。
いや、日立が空気圧縮事業を拡大、売り込んでいくというのは間違いないわけですが、今回はそれ以上の狙いがあると考えられます。
それが、産業系デジタルソリューション事業の北米展開。
いわゆる、IoT関連事業だとでも思ってもらえば分かりやすいでしょう。
要するに、空気圧縮事業をテコに、米国でIoTデジタル化の提案をしていくという話です。
日立のIoT技術と販売部隊が優れていて、サルエアー製品とこの事業をうまくつなげることができるならば、日立の作戦はうまくいくでしょう。
一方、まったくもって受け入られなかった、何らかの理由で顧客離れが進む、こうなってくると、サルエアーは北米でのお荷物になりかねません。
このあたりは、日立がどう北米で展開させていくのか、特にIoTの面においてよく見ていく必要があります。
北米に強いサルエアー、アジアで強い日立、相互補完関係にはある。日立はグローバル展開を加速させるきっかけにできるか。
なお、サルエアーがいかに北米でプレゼンスがあるかは上述しましたが、一方日立はアジアの販売網が強い。
よって、この2つが組み合わされば、グローバル展開という意味では、おもしろいものがあるといえます。
日立の北米展開に要注目です。