まさかまさかのKKR登場、革新機構はちゃんと仕事をしていたようだ。
いったいどこが買うのか分からず、混沌としてきた感があった東芝メモリ買収戦。しかし、ここにきて、遂に勝敗を決めるぐらいの「どでかい話」がきました。
KKRと産業革新機構が組むという今回の話。これはすごい話になってきました。
東芝半導体メモリー事業の入札で、KKRと産業革新機構が共同で応札
日経新聞によると、東芝メモリ入札で、米投資ファンド大手のコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)と官民ファンドの産業革新機構が共同で応札することが21日わかったとのこと。
KKRと革新機構の日米連合は東芝メモリの資産査定などを経て、5月中旬の2次入札に応札する見通しとのこと。両社に日本政策投資銀行が加わる案も出ており、提示する買収額は今後詰めるとのこと。
東芝と提携関係の米ウエスタンデジタル(WD)もこの枠組みに合流する可能性もあるとのこと。
東芝が進める半導体メモリー事業の入札手続きに、米投資ファンド大手のコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)と官民ファンドの産業革新機構が共同で応札することが21日わかった
KKRと革新機構の日米連合は芝メモリの資産査定などを経て、5月中旬の2次入札に応札する見通し
両社に日本政策投資銀行が加わる案も出ており、提示する買収額は今後詰める
東芝と提携関係の米ウエスタンデジタル(WD)もこの枠組みに合流する可能性もある
考察: 東芝メモリ買収で登場するKKR、日本に関心ありまくりで最近絶好調。KKRは二次入札に強い。東芝メモリ買収で、産業革新機構はKKRの資金力、最近の大型買収の経験、そして、最近の二次入札の強さを評価したと考えられる。
KKRがいきなり登場しました。
KKRはご存知でしょうか。当ブログでも、KKRについてはもう何回も扱っています。KKRは最近、カルソニックカンセイ買収、日立工機買収などしたファンドです。
米ファンドですが、ここ最近は日本に関心がありまくり。一番最近では日立工機買収の時に、KKRについて書きました。
ちなみに今回何がおもしろいのか。上記記事で私はこう書いています。
- KKRは日産のカルソニックカンセイ買収の時も、二次入札で競い買っています。いい条件を出したんですよ、他のファンドよりも。
- 今回も同じです。一番いい条件を出して、日立工機を買いに行くわけです。だから、今年、関係者の間でも目立ってますね。
そうです、KKRはカルソニックカンセイ買収の際も、日立工機買収の際も、二次で一番いい条件を出して勝利しているわけです。つまり、ここ最近は、勝負所で非常にうまくやり、勝利しているファンド。
今回の東芝メモリ買収戦でも、二次でいきなり登場(ちなみに今回は魅力的な提案があれば二次からでも参加できます)。おもしろいでしょう。
革新機構は、KKRの資金力、KKRの最近の日本での動きへの評価、さらに、KKRでの「二次入札での交渉力」も見たと私は思っています。革新機構だって、それだけ負けられない勝負と見ているわけです。結果、総合的にKKRに話をかけたと思うわけです。
上記日経新聞によると、KKRは昨年末時点で約1300億ドル(約14兆3千億円)を運用し資金は潤沢とのこと。KKRの最近の買収含め、こうした点を革新機構は評価し共同で買収提案する検討に入ったもようだとのこと。
KKRは昨年末時点で約1300億ドル(約14兆3千億円)を運用し資金は潤沢
革新機構は評価し共同で買収提案する検討に入ったもようだ
やはり資金が潤沢なのはポイント。今回は大型の話ですから。カルソニックカンセイ、日立工機などでの大型買収での活躍、あと、上記で書いたように、ここ最近のKKRの二次入札での強さも加えていいでしょう。
考察: 産業革新機構、東芝メモリ買収で、勉強しているどころじゃなく、実はKKRと交渉し、きちんと話をまとめていた。産業革新機構がKKRを狙ったのは、なかなか目の付け所がいい。産業革新機構はシャープの時のリベンジができるかもしれない。KKR・産業革新機構・WD連合が実現すれば、一番理想。
あと、今回の産業革新機構の動き。
シャープの時で鴻海にもっていかれてしまったこともありますし、最近では東芝メモリ買収に関して
「勉強している」
という発言をしたとありました。これを聞いた時、勉強してる時か?と思った方もおられるでしょう。
それが一転、実はKKRときっちり交渉をしており、二次入札ではKKRと組むというわけです。
「勉強している」なんて突っ込まれそうなことを言っておき、きちんとやるべきことはやっていた、と。
この産業革新機構の行動力。産業革新機構を見直しました。
あと、行動力だけではありません。
KKRを選んだあたり、本当に勝負に勝ちたいと考えている姿勢が見て取れます。
そもそも、独占禁止法の問題などがありますから、やはりファンドが今回は大きくでてくるべきところなわけです。
当初、シルバーレイクが出た際、私はこれに期待をしました。
[シルバーレイク・パートナーズ、ブロードコムが2兆円提示] 東芝半導体に米社が2兆円提示。技術流出の点をクリアできるかどうか。どうなる東芝メモリ、2次入札。
上記記事でファンドに関し、私はこう述べています
- 「個人的には、ファンドがどの程度おもしろい提案をするのかに注目しています。」
- 独占禁止法の観点からいえば、やはりファンドがどのような提案をするのか、ここに注目せざるを得なかったわけです。そして、今回、米ファンドのシルバーレイク・パートナーズの名前が挙がっているわけです。
- ファンドで独占禁止法を気にする必要がなく、さらに同盟国の米国。2次入札行きの可能性は極めて高いといえるでしょう。
そうです、やはりファンドが今回は当初から重要と考えられていたわけです。
しかし、後に、シルバーレイクは、ブロードコムと組むという話になってきました。
ここで問題が生じます。ブロードコムは、ウエスタンデジタルが売りたくないところだからです。
今回の買収戦では、ウエスタンデジタルが何よりも一番キーです。
そのウエスタンデジタルが一番嫌う、ブロードコムと一緒に、シルバーレイクがやるというあたり、もういったいどうなってしまうのかという混沌としたものがあったわけです。
さて、ウエスタンデジタルが重要と書きましたが、今回のミソは、KKR・産業革新機構に、ウエスタンデジタルが入ってくる可能性があるという話です。
上記日経新聞によると、WDは同業他社による東芝メモリの買収を「長期的な関係を築けない」(幹部)として拒む意向とのこと。
ただKKRと革新機構の日米連合であれば現状の共同生産体制を維持しつつ、日本政府の支援も得られる見込みもあるとのこと。WDはKKRに連携を打診し始めており、条件次第ではWDが日米連合に参画する可能性もあるとのこと。
同業他社が買収すると、各国の独占禁止法の審査が必要で、売却手続きが長引く恐れがあったとのこと。官民ファンドの革新機構が連合に加われば、安全保障の観点から国内企業への投資を規制する外国為替及び外国貿易法(外為法)に抵触するリスクも薄められるとのこと。
WDは同業他社による東芝メモリの買収を「長期的な関係を築けない」(幹部)として拒む意向
ただKKRと革新機構の日米連合であれば現状の共同生産体制を維持しつつ、日本政府の支援も得られる見込みもある
WDはKKRに連携を打診し始めており、条件次第ではWDが日米連合に参画する可能性もある
同業他社が買収すると、各国の独占禁止法の審査が必要で、売却手続きが長引く恐れがあった
官民ファンドの革新機構が連合に加われば、安全保障の観点から国内企業への投資を規制する外国為替及び外国貿易法(外為法)に抵触するリスクも薄められる
ウエスタンデジタルは今回のキープレイヤー。ウエスタンデジタルが単独でいくと、日本での影響力、そして、独占禁止法などの観点からいろいろ懸念が出てくるわけです。
ただ、WD主体というより、KKR・産業革新機構主体で動き、それにWDが続く可能性があるという今回の話。
KKR・革新機構・WDとなれば、日米連合という理想の形で今回の東芝メモリの買収を完結できる可能性が高まります。
今後の懸念材料としては、WDが何らかの理由で駄々をこねだして、WDが主体でなければいやだと言ってくるとき。これはさすがに参ってしまいます。
そんなことが起きないよう、KKRと革新機構には、全力のエネルギーを注ぎ、WD説得にあたっていただきたく思います。