借金だらけ。でも買いたい会社。
ソフトバンクのARMホールディングス買収で市場が反応しています。19日の反応はというと、終値10.32%下落という結果となりました。投資家が何を懸念しているのか、また、何を知っておくべきなのかを考察します。
新たに一兆円の借り入れへ
7月19日にロイターが伝えたところ、ARMホールディングス買収には、3兆3千億円が投資され、そのうち約1兆円は借金で賄う計画とのこと。9月末までに完全子会社化し、モノのインターネット(IoT)を今後の事業の核にするとのこと。そして、この巨額の借り入れに市場では賛否両論とのこと。
買収に約3兆3千億円を投資
うち約1兆円は借金で賄う計画
9月末までに完全子会社
自動車や家電などをネットでつなぐ「モノのインターネット(IoT)」を今後の事業の核
巨額の借り入れに市場では賛否両論
1兆円借り入れは半端ないです。何で半端ないか。それが下記。
有利子負債は現時点でも半端ないのに、さらに増える
日経新聞によると、ソフトバンクの有利子負債は11兆9200億円(16年3月末時点)で、今回の買収でさらに膨らむ見通しとのこと。これは、年間の売上高9兆1500億円を大きく上回るとのこと。
11兆9200億円(16年3月末時点)
今回の買収でさらに膨らむ見通し
年間の売上高9兆1500億円を大きく上回り、財務体質の悪化を懸念する声は根強
はっきりいって、昔から常にこういう話題はでてきました。借金だらけの会社なんていう指摘は、長年されていることです。
数字だけ見れば、相当やばいことになります。有利子負債比率、計算してみてください。現時点でもかなりいっちゃってますが、今回の1兆円の借り入れで、ますますいっちゃうことになります。
結論。ファンダメンタルズで行く人は、ソフトバンクは今回、避けてるでしょう。私なんかもファンダメンタルズガチガチの勉強もしましたから気持ちはよくわかります。
でも、一方で、私はこれがソフトバンクらしさだと思っています。つまり、ギリギリの綱渡りをする会社。だから、あそこまで大きくなれた。ボーダフォンの時だって、同じような話がでたでしょう。日本の経営者でこんなおもしろいことできる人っていないでしょう。
だから、そういう意味で、この経営者はすごい人だなぁと感心しています。でも、応援するなら、覚悟をもって応援したほうがいいでしょう。ドコモと比較してみてください。どれだけいっちゃってるかはよく分かりますから。
あと、思わずおもしろいなぁと思う別の理由。それは、ARMホールディングスというおもしろい会社を買ってるからであります。それが下記。
ARMホールディングスはおもしろい会社。通常の半導体会社ではない
で、借り入れしてまで買うべきか云々の前に、今回買う会社がどんな会社なのか、それをしっかり知る必要があります。
アーム・ホールディングスが半導体会社だと簡潔にかいてあるコメントをたまに見かけます。この書き方は、非常に誤解を招くものだと思っています。ARMホールディングスの儲け方については、下記の記事で書きました。
[ARMホールディングス] ソフトバンクが買収するアーム・ホールディングスとは結局どんな会社か。ARMホールディングスの儲け方を考察。アーム社がなぜ魅力的か分かる
この記事で書きましたが、アーム・ホールディングスというのは、知的所有権(IP)のサプライヤです。開発、設計することで稼いでいる会社であります。このことをまず認識する必要があります。普通の半導体会社だと思ってはいけません。これゆえ、IoTのプレーヤーとして活躍すると孫社長は見ているわけです。
顧客にはリーディングカンパニーがそろい、ARMホールディングスのIPが市場に広まっている
上記の記事でも書きましたが、顧客にはアップルなど、多くのリーディングカンパニーがいます。こういった企業が、ARMホールディングスのIPを使い、作業している。ある意味インフラ整備しちゃってるようなものです。財務も良好。将来が有望視されている会社であることは間違いありません。こんな会社を狙ってきたのは、さすが、孫正義社長、先見性があるといっていいでしょう。
買収発表前から既にギリギリの綱渡り
実は、ソフトバンクがARM社を買収した時、イギリス政府がこの買収へ介入するのではないかという考え方をする人も多くいました。それが下記の記事。
[メイ首相はARM買収を歓迎] メイ英首相はソフトバンクのARM買収に介入しない。賛成の意向。なぜ。ソフトバンクはイギリス政府の介入なしで買収を進めることができる
結局、こういうのを見ていても、ソフトバンクがギリギリのことやってるなぁという印象を受けます。
いくつか懸念材料はあるが、スプリントがやはり気になる
いろいろいいこと書いてますが、懸念材料がいくつかあります。いくつかある中で、今回一つあげたいのは、スプリント。いや、本業といったほうがいいでしょうか。懸念材料としてあげられるべきは、やはり短期での本業との調和性でしょう。
上記日経新聞によると、アーム社が持つIoTの関連技術も当面はソフトバンクグループの本業との親和性は薄いとのこと。
アーム社が持つIoTの関連技術も当面はソフトバンクグループの本業との親和性は薄いとの指摘
将来的には成功する可能性は大いにあります。ただ、ボロボロのスプリント。結局これどうすんねんって話にもなってくるわけですよ。アリババやら数社の株式を売って得た2兆円、これはスプリントに直接入ってきません。なんだかおいてきぼり感があります。結局、スプリント買収は失敗だったのではないだろうかというレッテルを貼る人がいることは多いでしょう。ボロボロのスプリントをおいておいて、新しい方へいってしまうということに対する懸念もあるでしょう。
結局、どう短期的にこの本業と調和させていくのか、ここが見物であります。応援する人は、借金の多さを認識して応援しないと、痛い目にあいます。